この書は、大学で1年以上化学を学び有機化学の基本や用語を知っている読者を想定している。 前版の第2版が出版されてから8年が経過したが、その間多くの進歩があった。 X線やNMRによって解かれた蛋白質や核酸の構造の数は4倍以上になり、前版当時には1つも分かっていなかったゲノムが、今では100以上も明らかにされている。
4つのテーマがある。
本書は5つの部分で構成されている。
1年の学生を対象に、全体を網羅することをねらっている。
生物には、核にDNAを収めた真核生物(eukaryotes)と、核を持たない原核生物(prokaryotes)の2つに大別される。
原核生物は、形状から、球菌(spheroidal, cocci)、桿菌(長方形状、rodlike, bacilli)、らせん菌(らせん状、helically coiled, spirilla)の3種に大別できる。 鞭毛(Flagella)または繊毛(Pili)を持ち動き回るものもいる。 細胞質には単一の染色糸(chromosome)があり、核様体(nucleoid)を形成。 細胞壁を持つものもいる。
栄養の獲得方法として、他の生物を直接利用することなく環境中の物質とエネルギーで生きることができる独立栄養(autotrophs)生物と、そうでない従属栄養(heterotrophs)生物がいる。 エネルギー源を化学反応に依存する化学合成(chemolithotrophs)生物と、光エネルギーを利用する光合成(phototrophs)生物とがいる。 独立化学合成生物は、NH3,H2S,Fe2+などの無機物酸化で得られるエネルギーを利用する。 独立光合成生物は、光エネルギーを利用してCO2から炭化水素を合成する。シアノバクテリア(かつて藍藻と呼ばれていた)がこれに含まれる。
シアノバクテリアの中には空中窒素固定を行うものもいる。
紫・緑の光合成細菌は、H2OではなくH2Sを利用して炭酸同化を行う生物で、嫌気条件下に生息(絶対嫌気、obligate anaerobes)。 従属栄養生物は絶対好気(obligate aerobes)なものが多い(動物も含む)。硫黄還元細菌、窒素還元細菌などは無機物の還元によってエネルギーを得る絶対嫌気な従属栄養生物。 通性嫌気(facultative anaerobes)生物は嫌気条件下では発酵(fermentation)を行って栄養を得、好気条件では酸素呼吸を行う生物。大腸菌などがこれ。
一般的な分類では、原核生物界(prokaryotae)またはモネラ界(monera)を2つに分ける。 細菌(bacteria、真正細菌 eubacteria とも呼ぶ)と古細菌(archaea)。 これを界のレベルにするなら、1つ上はドメイン。
真核生物の細胞は10〜100μmの直径の大きさを持つ。 体積で比較すると、原核生物の1000倍から100万倍にもなる。 しかし、大きさではなく、細胞内に特有の機能を持った細胞内小器官を持っているのが、真核生物の最大の特徴である。 原核生物は仕組みをなるべく簡単にして、急速に増殖しニッチな環境にも適応できる戦略と取るのに対し、真核生物はより複雑で増殖速度も遅いが、安定した環境では有利である。 最初の真核生物は今から14億年前、生物が生まれてから24億年経ってから現れた。 恐らく原核生物のマイコプラズマのようなものから進化してできたと思われる。
真核生物は原核生物に比べて細胞の体積が大きいので、相対的に表面の割合が小さくなる。 どちらも外界との物質のやりとりは細胞膜を使って行うが、真核生物は細胞膜を内側に陥没させて物質を取り込むエンドサイトーシス(endocytosis)を使う。これによって分子だけではなくバクテリアなどの大きな物質も取り込むことができる。この逆の排出がエキソサイトーシス(exocytosis)である。
遺伝物質を格納している。 真核生物は種特有の情報をDNA分子に保存している。 染色糸(chromosome)はタンパク質と複合して染色体(chromatin)を形成する。 遺伝情報量は原核生物よりはるかに多く、例えばヒトの細胞は大腸菌の700倍以上のDNAがある。 ヒトの遺伝子(ゲノム)情報量は800MBにもなり、その量はvoetの本の情報量の200倍にもなる。 DNAによってコードされた情報はRNAに転写される。 RNAは処理を受けた後、核の外(細胞質基質、cytoplasm)に運び出される。 その後、リボソームに向かい、タンパク質の合成を行う。 核膜は二重膜で、幅90Å以内の孔が開いている。 これによりタンパク質やRNAの、核内外の出入りを制御している。 核の中には少なくとも1つ、核小体(仁、nucleous)がある。 ここにはリボソームRNAが集まる。 リボソームRNAをコードする遺伝子のコピーが含まれる。 核内で転写され、リボソームタンパク質と結合したRNAはサイトソル(cytosol、cytoplasmの外、膜結合細胞内小器官の外)にある合成場所に運ばれる。 未熟なリボソームはサイトソルに運ばれ、合成が完了する。 タンパク質合成はサイトソルでしか起こらない。
小胞体(endoplasmic reticulum)は入り組んだ膜に囲まれた細胞内小器官で、タンパク質を合成するリボソームが表面についた粗面小胞体(rough endoplasmic reticulum)と、リボソームはついていなくて脂質の合成の場となっている滑面小胞体(smooth endoplasmic reticulum)がある。 小胞体で合成された物質の多くはゴルジ体(Golgi apparatus)に運ばれる。ゴルジ体は平らな袋が積み重なった構造をしており、ここでさらに物質は加工される。
ミトコンドリア(mitochondria)はほとんど全ての真核生物が持つ、細胞の酸素呼吸の場である。 大きさは1.0×2.0μmと細菌程度であり、形は楕円形をしていることが多い。 典型的な真核生物の細胞には2000個程度のミトコンドリアが含まれ、細胞の容積の5分の1程度を占める。
電子顕微鏡による研究により、ミトコンドリアには2つの膜があることが分かった。 1つは滑らかな外膜、もう1つは幾重にも折り畳まれた内膜である。 内膜の陥入部分はクリステ(cristae)と呼ばれる。 そして、これら2つの膜によって2種類の空間が作られている。 1つは内膜と外膜の間の空間は膜間空間(intermembrane space)、 もう1つは内膜の内側にあるマトリックス空間(matrix space)である。 酸素呼吸反応を触媒する酵素はゲル状のマトリックスか内膜上に存在する。 これらの酵素は、エネルギーを生成する養分の酸化と、エネルギーが必要なアデノシン3リン酸(ATP)の合成をセットで行う。ATPは細胞の外に運ばれ、様々なエネルギーが必要な反応の燃料として使われる。
ミトコンドリアは細菌のような大きさと形をしており、マトリックス空間にはミトコンドリア特有のDNA、RNA、リボソームを持っている。これにより必要なミトコンドリアの部位のいくつかを合成する。 更に2分裂で増殖するなど、今の好気性細菌と非常に似ている。 このことから、ミトコンドリアは元々別に生息していたグラム陰性好気細菌が嫌気性真核生物と共生するようになったのではないかと考えられている。 真核生物から供給された養分が細菌によって消費され、非酸素呼吸に比べて何倍も効率のいい酸素呼吸代謝によって得られた産物を真核生物に返還したと考えられる。 この仮定は、アメーバの一種 Plelomyxa palustris でも確認されている。この生物は数少ないミトコンドリアを持たない真核生物である。 このような好気細菌との共生関係が永続するようになったと考えられる。
リソソームは一重膜を持った細胞内小器官で、多くは0.1〜0.8
タンパク質を緩やかな条件で加水分解して得られるアミノ酸は、 グリシンを除いて全て光学活性を持つ。 光学活性とは、偏光平面を回転させる働きのことである。 光学活性は、右手と左手の様にお互い重ね合わせることのできない、 あるものと、その鏡像との関係に相当するものである。 光学活性を持つ条件とは、 結合するものが4つとも異なる炭素を物質中に持っていること。
大腸菌は生命維持に必須な2種類のDNAポリメラーゼを持っている。 ポリメラーゼIII(Pol III)はリーディング鎖(5'端から3'端に向かって連続的に合成されるDNA鎖)とラギング鎖(3'端から5'端に向かって、断片を繋ぐ形で不連続に合成されるDNA鎖、各断片は5'側から3'側に向かう合成方向とは逆の向きに合成される)の大半を合成する。 ポリメラーゼI(Pol I)は、RNAプライマーを取り除きDNAと置き換える。 それができるのはもう1つの働きである5'→3'エキソヌクレアーゼ活性による。 これはポリヌクレオチド鎖を末端から1つ以上のヌクレオチドを加水分解的に除去する働きである。 ラギング鎖を5'側から3'側に向かって複製していくと、1つ前(3'側)の最初にあるRNAプライマーにぶつかる。このRNAプライマーがDNAポリメラーゼIの5'→3'エキソヌクレアーゼ活性によってDNAに置き換えられる。
リーディング鎖は最初の1個のRNAプライマーをDNAに置き換えるだけで済むが、 ラギング鎖はRNAプライマーをDNAに置き換えただけでは、各断片(岡崎フラグメント)間には切れ目が入ったままである。 そこでこの切れ目をつなぐ必要がある。 この働きをするのが、DNAリガーゼで、隣り合う3'OHと、5'リン酸基を共有結合的につなぐ。
大腸菌の遺伝子転写の際、1万ヌクレオチドに1つ以内の割合で誤りが発生する。 一方新しく複製されたDNAには1億〜100億ヌクレオチドに1つ以内の割合でしか誤りは発生しない。 前述の通り、RNAプライマーを使う事でラギング鎖の合成信頼性を向上させることができる。
蛋白質を質量によって分離する方法。
タンパク質は生化学反応における活動の中心である。 酵素として働くタンパク質は、生命を総合的に指示している複雑な化学反応を触媒する。 タンパク質はこれらの反応を制御する。 それは酵素の部品として直接的に制御するものであったり、 化学的な伝達物質を作ることによる間接的な制御であったりする。 後者はホルモンと、その受容体で知られている。 また、金属イオン、酸素、ブドウ糖、脂質などの重要物質を輸送したり貯蔵したりする役割もある。
タンパク質の性質はその立体構造が大きな決定要因となっている。 そう言えるのは、同じ20種のアミノ酸からできていても異なる性質を持つ場合があるためである。 実際、変性した(denatured)または折りたたみされていない(unfolded)タンパク質は、 側鎖をランダムに損傷させた相同タンパク質と比べて平均的には性質が似ている。 変性していない(native)または折り畳まれた(folded)タンパク質の三次元構造は、 1次構造によって決定され〜
この章では、タンパク質の構造的な特徴、タンパク質を折りたたむ力、そして複合体を形成する階層的な構造について議論する。 これは、タンパク質の生化学的な役割を理解するのに必要な構造と機能との関係についての基本的な情報を提供することとなろう。 タンパク質の動的なふるまいと、どのようにして折りたたみが行われるかについては9章で扱う。
多量体の2次構造は、その主鎖の局所的構造で定義される。 タンパク質の場合、ポリペプチド主鎖の折りたたみ様式を制限することを意味し、 らせん、平面状シート、折り返しが挙げられる。 この基本的なモチーフについて触れる前に、 ペプチド基の幾何学的な性質について見てみることにする。 なぜなら、ペプチド基を含む他の構造を理解する上でも不可欠だからである。
ペプチド結合部分は、平面で固定された構造を形成する。
ポリペプチド主鎖の構造は「ねじれ角(torsion angle, 回転角 rotation angle, or 二面角 dihedral angle)」によって特定される。 それはα炭素ーアミノ基窒素(Cα-N)間の回転角(φ)と α炭素ーカルボキシル炭素間(Cα-C)間の回転角(ψ)の2つで構成される。 どちらの角度も、ポリペプチド鎖が同一平面上で結合している状態を180°とし、 トランス構造を基準とし、α炭素から見て時計周り(右回り)に回転すると角度が増加すると、 規定する。 エタン(ethane)の場合、ねじれ型配座(staggered comformation、ねじれ角は180°)が最も安定。 重なり型配座(eclipsed conformation、ねじれ角0°)が最も不安定。 置換基が水素以外の場合、立体的障害はさらに大きくなり、 自由回転するためのエネルギー障壁は増大する。
許容されるφとψの値は、3残基のペプチド鎖の原子間距離を計算すれば分かる。 結合していない原子間距離がファンデルワールス距離よりも小さいような構造はとることができない。 そのような情報は、構造地図(conformational map)またはラマチャンドラン図(Ramachandran diagram)と呼ばれる。
立体的に許容されるφ(Cα-N角)とψ(Cα-C角)は、 前後2アミノ酸残基を含めた計3残基の各原子間距離を計算することによって決定される。 立体的に許容されない構造とは、 非結合原子間の距離が、ファンデルワールス距離以内にあるものである。 そのような情報は、構造図、またはラマチャンドランダイアグラムにまとめられる。 これはG.N.ラマチャンドランによって考案されたものである。 実際、X線結晶解析によって決定された非グリシン残基については、ほとんどこの許容範囲内に収まった構造をしている。
らせんはタンパク質の2次構造でもっとも目立つ構造である。 ペプチド鎖が各残基のα炭素について同じ長さずつねじれると、 らせん構造を取る。 らせん構造を特定するには、φとψの角度、 もしくは1回転辺りの残基数nと、1回転で進む軸方向距離(ピッチ pitch)pが必要。 図8-10にらせんの構造事例をあげた。 らせんは対掌性(chirality)があることに注目して欲しい。 つまり、右巻きと左巻きがある。 右巻きらせんは、らせんの昇る方向に右手の親指を向けたとき、 他の4本の指が指差す方向に分子が進んでいるらせんを指す。 タンパク質の場合、nは整数でなくてもいいのだが、実際には整数でないことはまれである。 もちろん、ペプチドらせんがとりうる構造角度は、 ラマチャンドラン(Ramachandran)図で許される範囲内に限られる。 更に、実際存在し続けるには、許容範囲内にあるだけではなく、 安定な構造でなければならない。 ペプチドらせんと他の2次構造をつなぐ「接着剤」の役割をしているものの1つは水素結合である。
ポリペプチド鎖のらせん形構造は1種類しかなく、 同時にねじれ角と、最適な水素結合パターンは決定される。 このらせんはαらせん(α helix)と呼ばれ、 1951年にポーリング(Pauling)が、モデルから発見したもので、 構造生化学における記念すべき発見とされるものである。
αらせんは、L-αアミノ酸残基鎖が右巻きになったもので、 ねじれ角はφ=-57°ψ=-47°、 1回転当たりの残基数nは3.6、 1回転で進む距離pは5.4Å。 (D-αアミノ酸は左巻きになり、φ=+57°、ψ=+47°、n=-3.6、p=5.4Å)
αらせんの水素結合は、 ペプチド結合のNHと、4つ前のペプチド結合のC=Oが水素結合を形成し、 その水素結合の距離は2.8Åである。 さらに、αらせんの中心は詰まっている。 つまり、原子はお互いファンデルワールス半径内にあり、会合エネルギーは最大化されている。 側鎖
1951年、この年はαらせんが提案された年であり、同時にPaulingとCoreyがそれとは異なるポリペプチドの2次構造〜βシート〜の存在を予測した年でもある。 αらせんと同様、βシートもラマチャンドラン図の許容領域にある角度を取る(図8-7)。 そして、ポリペプチド主鎖において最大限水素結合を利用している。 ところが、β平面シートは同一シート内よりはむしろ隣接シート間で水素結合を形成する。 この点はαらせんとは異なる点である。 β平面シートには次の2種類がある。
繊維状タンパク質とは、まっすぐ伸びた分子構造を持つ。 皮膚、腱、骨などに見られる。 構造維持、結合、保護などの役割をする構造タンパク質である。 また、筋肉や繊毛などのタンパク質は動く役割を持つ。 この章では構造と機能の関係について、特徴がよく分かっているケラチンとコラーゲンを取り上げて議論する。 筋肉や繊毛のタンパク質については35.3.節で議論する。 繊維状タンパク質は球状タンパク質(globular protein、8.3.節)に比べて構造は単純である。
繊維状分子はめったに結晶化しないため、単一の結晶によるX線解析を使うことは普通ない。 繊維状分子は結晶化するよりもむしろ、 分子の長軸方向に沿って多少平行に集合するが、その他の方向については決まった配列を取らない。 こういった分子のX線回折パターンでも、多少の情報は得られるが、 やはり結晶化できたものに比べると情報は限られている(例:図8-24)。 そのため、繊維状分子の構造はあまり詳細には分かっていない。 それでも、1930年代の始めにはWilliam Astburyが独自のX線解析研究を行っている。 氏は容易に手に入る毛と腱を使った。 最初のX線結晶構造が決定されたのは1950年代の終わりになってからであるが、 これら繊維の研究は、構造原理を解明するための最初の試行段階として今でも続けられている。 またポーリングのαらせん、βシート形成の実験基礎となった。
炭化水素(carbonhydrates)、または糖(saccharides)は全ての生命に必須な物質。 一般的に炭素数3以上の(C・H2O)nで示される化合物が単位となる(単糖、monosaccharides)。 単糖は糖新生(gluconeogenesis)や植物による光合成(photosynthesis) 少糖(olygosaccharides)は数個の単糖が共有結合(グリコシド結合)したもので、よくタンパク質や脂質とも結合したものを形成する(糖タンパク glycoproteins、糖脂質 glycolipids、これらをまとめて複合糖質 glycoconjugates)。 多糖(polysaccharides)は多くの単糖が結合したもので分子量は100万Daを越えるものもある。 よく見られるのは、植物のセルロース(cellulose)、でんぷん(sarch)、動物のグリコーゲン(glycogen)。
甲状腺(thyroid, thyroid gland)は2種類のホルモン、トリヨードチロニン(triiodothyronine, T3)とチロキシン(thyroxine, T4)があり、大半の組織はそれによって代謝が刺激される(大人の脳は例外)。 この一般的ではない、沃素化されたアミノ酸の生産はチログロブリン(thyroglobulin)の合成から始まる。 このタンパク質は、2748残基のアミノ酸で構成され、独特の翻訳後修飾を受ける。
甲状腺ホルモンは非極性物質で、血清運搬タンパク質と結合して血液によって運ばれる。 血清運搬タンパク質は、チロキシン結合グロブリンが主だが、プレアルブミン(prealbumin)やアルブミン(albumin)も用いられる。 その後ホルモンは対象細胞の細胞膜を通過し、細胞質に入って、特定のタンパク質と結合する。 そのホルモンタンパク質複合体は核に入ることはないので、甲状腺ホルモンの細胞内における貯蔵の働きをしていると考えられている。 本当の甲状腺ホルモン受容体は染色体に関係するタンパク質で、核から離れない。 T3の結合と、量は少ないがT4もこの受容体を活性化し、転写因子となる。 結合すると、多くの代謝酵素の発現率が増加する。 親和性の高い甲状腺ホルモン結合部位はミトコンドリア膜の内幕でも見られる。 このことは、受容体が直接酸素消費とATPの生産を制御していることを示唆する。
甲状腺ホルモンの濃度が正常でなくなると障害を生じる。 甲状腺機能低下症(hypothyroidism)は眠気を生じ(lethargy)、肥満(obesity)を招き、肌が冷えて乾く。 一方、甲状腺機能亢進症(hyperthyroidism)はその逆の症状を呈する。 土壌中の沃素が少ない地域に住む人々の間では、甲状腺腫(goiter)の一因となる甲状腺肥大を伴う甲状腺機能低下症がよく見られる。 少量の沃化ナトリウム(NaI)を人工的に加えた食卓塩を使うことによって、 沃素欠乏症は簡単に防ぐことができる。 若い哺乳類の成長と発達には甲状腺ホルモンが必要で、 胎児期から出生直後における甲状腺機能低下症は、不可逆な心身の発達障害を引き起こす。 これはクレチン症(cretinism)と呼ばれる。
18.3.節にて、グルカゴンやエピネフィリンのようなホルモンはグリコーゲンの代謝を制御することを見てきた。その方法とは、ATPに由来する二次伝達物質cAMP(環状AMP)の合成を、アデニル酸シクラーゼ(AC)の刺激によって行うというものである。 その結果、環状AMPはタンパク質キナーゼA(PKA)に結合して酵素が活性化され、 リン酸化/脱リン酸化反応が開始されて、 最終的には、グリコーゲンのリン酸化とグリコーゲンの合成の活性が制御される。 多くの細胞外信号分子(リガンド、アゴニスト
塩基対形成は明らかに二本鎖核酸を1つに束ねる「のり」である。 自主相補的オリゴヌクレオチドの結晶構造の中ではワトソン-クリック対だけが起こる。 だから、ワトソン-クリック塩基対とその他の二重水素結合による塩基対との違いがどのようなものであるかを理解することは重要である(図29-12)。