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メモ〜Cell関係

これは、"Molecular biology of the cell 4th edition" (ISBN 0-8153-4072-9) を読むに当たって必要に応じ訳したものをメモとして残しているものです。

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3. 蛋白質(Proteins)

顕微鏡で細胞を見たり、電気的・生化学的な細胞の活動を分析したりすると、必然的に蛋白質を観察することになる。 蛋白質は細胞の乾燥重量の大半を占めている。 蛋白質は細胞を構築しているだけではなく、細胞内のほとんどの機能を果たしている。 酵素はさまざまな反応を促進させ、細胞膜にある蛋白質はチャンネルやポンプを作り、低分子の出入りを制御している。 また、細胞間の信号伝達を担っていたり、細胞内に入ってくる信号を統合して細胞核に伝えたりする蛋白質もある。 更に動く部分で小さな分子機械として働く蛋白質もある。 キネシンは細胞質で細胞内小器官を進ませ、 トポイソメラーゼはDNA分子のもつれた結び目をほどく。 抗体、毒素、ホルモン、不凍結、柔軟な繊維、綱、蛍光源に特化した蛋白質もある。 どのように遺伝子が働き、どのように筋肉は収縮し、どのように神経は電気を伝え、胚はどのように発生し、我々の身体がどのように機能するかを理解しようとする前に、蛋白質についての理解を深めなければならない。

3.1. 蛋白質の形と構造(The shape and structure of proteins)

3.1.1. 蛋白質の形はそのアミノ酸配列で決まっている(The shape of protein is specified by its amino acid sequence)

3.1.2. 蛋白質は最も低いエネルギーを持つ構造をとる(Proteins fold into a conformation of lowest energy)

3.1.3. αらせんとβシートは共通の折りたたみ様式である(The α helix and the β sheet are common folding patterns)

3.1.4. 蛋白質ドメインは基本的な構造単位である(The protein domain is a fundamental unit of organization)

3.1.5. たくさんあるポリペプチド鎖のうち使えそうなのはわずかである(Few of the many possible polypeptide chains will be useful)

3.1.6. 蛋白質は多くのファミリーに分類できる(Proteins can be classified into many families)

3.1.7. 蛋白質はとることのできる折りたたみ様式の数は限られている(Proteins can adopt a limited number of different protein folds)

3.1.8. 配列相同性検索によって関係の深いものを特定できる(Sequence homology searchs can identify close relatives)

3.1.9. コンピュータを使ってアミノ酸配列から既知の蛋白質立体構造を結びつけることができる(Computational methods allow amino acid sequences to be threaded into known protein fold)

3.1.10. モジュールと呼ばれる蛋白質ドメインは様々な種類の蛋白質を構成する(Some protein domains, called modules, form parts of many different proteins)

3.1.11. ヒトゲノムは複雑な蛋白質の組み合わせをコードしており、その多くが未知であることが明らかになった(The human genome encodes a complex set of proteins, revealing much that remains unknown)

3.1.12. 大きな蛋白質は複数のペプチド鎖でできていることが多い(Larger protein molecules often contain more than one polypeptide chain)

3.1.13. 長いらせん状の繊維を構成する蛋白質がある(Some proteins form long helical filaments)

3.1.14. 蛋白質分子はまっすぐな繊維状の構造をとることができる(A protein molecule can have an elongated, fibrous shape)

3.1.15. 細胞外蛋白質は共有結合による交差を形成して安定化していることが多い(Extracellular proteins are often stabilized by covalent cross-linkage)

3.1.16. 蛋白質分子はサブユニットがまずできて、それが集まって大きな構造をとることが多い(Protein molecules often serve as subunits for the assembly of large structures)

3.1.17. 細胞内では多くの構造が自主的に集まることができる(Many structures in cells are capable of self-assembly)

3.1.18. 複雑な生物学的構造は凝集因子に助けられてできることが多い(The formation of complex biological structures is often aided by assembly factor)

3.2. 蛋白質の機能(Protein function)

3.2.1. 全ての蛋白質は他の分子に結合する(All proteins bind to other molecules)

3.2.2. 蛋白質構造の詳細はその化学的性質によって決まる(The details of a protein's conformation determine its chemistry)

3.2.3. 蛋白質ファミリーのメンバーの配列を比較すると重要なリガンド結合部位が明らかになる(Sequence comparison between protein family members highlight crucial ligand binding sites)

3.2.4. 蛋白質が他の蛋白質と結合する方法にはいくつかの種類がある(Proteins bind to other proteins through several types of interface)

3.2.5. 抗体の結合部位は特に万能である(The binding site of antibodies are especially versatile)

3.2.6. 結合の強さは平衡定数によって判断される(Binding strength is measured by the equilibrium constant)

3.2.7. 酵素は強力で特異性の高い触媒である(Enzymes are powerful and highly specific catalysts)

3.2.8. 基質の結合は酵素触媒の最初の段階である(Substrate binding is the first step in enzyme catalysis)

3.2.9. 酵素は選択的に遷移状態を安定化することで反応を促進している(Enzymes speed reactions by selectively stabilizing transition states)

3.2.10. 酵素は酸触媒と塩基触媒を同時に使うことができる(Enzymes can use simultaneous acid and base catalysis)

3.2.11. リゾチームは酵素がどのように働くのかを説明する(Lysozyme illustrates how an enzyme works)

3.2.12. 低分子が強く結合し蛋白質に機能が付加される(Tightly bound small molecules add extra functions to proteins)

3.2.13. 酵素複合体は細胞の代謝を促進するのを助ける(Multienzyme complexes help to increase the rate of cell metabolism)

3.2.14. 酵素の触媒活性は制御される(The catalytic activities of enzyme are regulated)

3.2.15. 拮抗酵素は相互作用する活性部位を2つ以上持つ(Allosteric enzymes have tow or more binding sites that intract)

3.2.16. 結合部位が対になっている2つのリガンドはお互いに他方の結合に影響せざるをえない(Two ligands whose binding sites are couples must reciprocally affect each other's binding)

3.2.17. 対称的な蛋白質集合過程は協同的拮抗遷移をつくる(Symmetric protein assemblies produce cooperative allosteric transitions)

3.2.18. アスパラギン酸トランスカルバモイラーゼの拮抗遷移は原子的詳細によって理解された(The Allosteric Transition In Aspartate transcarbamoylase is understood in atomic detail)

3.2.19. 蛋白質の変化はリン酸化によって推進される(Many changes in proteins are driven by phosphorylation)

3.2.20. 真核生物細胞はたくさんの種類のリン酸転移酵素とリン酸加水分解酵素を持っている(A eucaryotic cell contains a large collection of protein kinases and protein phosphatases)

3.2.21. CdkおよびSrc蛋白質キナーゼの制御はいかに蛋白質がマイクロチップとして機能できるかを示している(The regulation of Cdk and Src protein kinases shows how a protein can function as a microchip)

3.2.22. GTPに結合して加水分解する蛋白質はどこにでも見られる細胞制御因子である(Proteins that bind and hydrolyze GTP are ubiquitous cellular regulators)

3.2.23. 制御蛋白質はGTPとGDPどちらを結合するかによってGTP結合蛋白質の活性を制御している(Regulatory proteins control the activity of GTP-binding proteins by determining whether GTP or GDP is bound)

3.2.24. 大きな蛋白質の動きは小さな蛋白質の動きからつくられている(Large protein movements can be generated from small ones)

3.2.25. モーター蛋白質は細胞内で大きな動きを産み出している(Moter proteins produce large movements in cells)

3.2.26. 膜結合輸送体は膜を越えて分子を輸送するのにエネルギーを使う(Membrane-bound transporters harness energy to pump molecules through membranes)

3.2.27. 蛋白質は蛋白質機械として働く大きな複合体をつくることがよくある(Proteins often form large complexes that function as protein machines)

3.2.28. 蛋白質相互作用の複合ネットワークは細胞機能の根底にある(A complex network of protein interations underlies cell function)

6. 細胞はどのようにして遺伝子を読むのか:DNAからタンパク質へ(How cells read the genome: from DNA to protein)

細胞内の遺伝情報がどのようにして核酸のDNA配列の中に暗号化されているのかが明らかになったのは、DNAの構造が明らかになった1950年代初頭のことにすぎない。 ところがその後の進歩は驚くべきものがある。 50年後には、ヒトを含め多くの生物の持つ遺伝情報は完全解読され、 私たちのような生物を完全に作り出すのに必要な情報を得ていることだろう。 生命は必要とする遺伝情報によって、 その細胞が生化学的そして構造的に特徴を決定づけられており、 また生物は無限に複雑な訳ではないことが明らかになった。

この章では、細胞がどのようにして遺伝情報を復号して利用しているのかについて説明する。 たった4文字のアルファベット〜DNAに含まれる4種類の異なるヌクレオチド〜によって書かれた遺伝的指示書が、どのようにして細菌、ショウジョウバエからヒトに至るまでの形成を指示しているのかについて、これまでに分かっている多くのことを示す。 これだけ多くのことが分かっていても、およそ30000遺伝子を持つヒトはおろか、500遺伝子を持つ単細胞生物の細菌でさえ未だに遺伝子の発見に多大なる労力が注がれている。 まだまだ多くの遺伝子が未知なままであり、その解読が次世代の細胞生物学者に期待されている。

細胞が遺伝子を復号する際の問題は、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の遺伝子の小さな一部分を見ることで理解することができる(図6-1)。 この中、あるいはその他の遺伝子にあるDNAに暗号化された情報の多くは、一列に並んでいる。 それらはその生物が作り出すタンパク質を構成するアミノ酸の情報を持っている。 3章で示したように、アミノ酸は各タンパク質がどのような形や化学的性質を持つかについて決定づけている。 あるタンパク質が細胞で作られる時、そのタンパク質に相当する遺伝子領域の情報が正確に復号される。 更に、どの時期にどの細胞でどのタンパク質を作るかについての情報も遺伝子に含まれている。 タンパク質は細胞の主要構成要素だが、 遺伝子の復号によって細胞の大きさ、形、生化学的性質、ふるまいを特徴づけるだけでなく、 種の特徴も決定づけている。

遺伝子中の情報は、辞書や電話帳のようにある法則にのっとって並べられていると予測されていた。 ある細菌の遺伝子では規則的に配列されていたが、一方でキイロショウジョウバエをはじめとする多くの多細胞生物では規則正しくは並んでいなかった。 タンパク質の情報を持っているDNAの小片が、意味のなさそうな大きなDNAのかたまりの中にちりばめられている。 ゲノムには、多くの遺伝子を含む部分と全く遺伝子を含まない部分とがある。 また、関係の深いタンパク質の情報が異なる染色体上にある場合もよくあるし、 逆に隣り合った場所にある遺伝子からできるタンパク質が、細胞内の働きにおいてほとんど関係ないことも珍しくない。 そのため、遺伝子を復号するのは単純なことではない。 強力なコンピュータを使っても、DNA配列中のどこに複雑な遺伝子の開始点と終了点があるのかを特定するのは今でも難しい。 ましてや各遺伝子がいつ発現するのかを予測するのは更に難しい。 ヒトゲノムのDNA配列は解読されたが、 全ての遺伝子を特定し正確なアミノ酸配列を明らかにするにはあと数十年かかるだろう。 それなのに、私たちの体を構成する各細胞は毎秒何千もの復号処理を行っている。

ゲノム中のDNAは直接タンパク質の合成を指定している訳ではなく、中間体としてRNAを用いている。 細胞があるタンパク質を必要とした時、染色体中の非常に長いDNA分子の一部分が、RNAへと複製される。 この過程を「転写(transcription)」と呼ぶ。 DNAの複製品であるRNAが鋳型となりタンパク質合成が指示される。 この過程を「翻訳(translation)」と呼ぶ。 したがって、細胞内における遺伝情報の流れは、DNA→RNA→タンパク質となる(図6-2)。 細菌からヒトに至るまで全ての生物において遺伝子発現の過程はこの方法で共通している。 この原則は、細胞生物学の分野では「セントラルドグマ」と呼ばれている。

セントラルドグマは普遍的原則であるが、 真核生物細胞ではDNAからタンパク質に至る過程中重要な変化が起きる。 RNA転写産物は核から出ていく前に「RNAスプライシング」などの処理を受ける。 この処理はRNA分子の意味を変化させ、これが真核生物細胞においてどのようにゲノムを読み取っているのかを理解する上では重要になっている。 最後に、ゲノムに暗号化されたタンパク質の産生に注目したが、 遺伝子RNAが最終産物となる場合もある。 タンパク質と同じように正確な立体構造を持ち、 細胞内で触媒の役割を果たす。

最初にゲノムの復号についてふれる。 これは遺伝子DNAからRNA分子が作られる転写過程である。 次にRNA分子の行く末について見る。 最後に、正しく折り畳まれたタンパク質が作られるところを見る。 章の末尾では、どのようにして現在見られるような情報蓄積、転写、翻訳のシステムができあがったのかを、細胞進化の初期段階から見る。

6.1. DNAからRNAへ(From DNA to RNA)

転写と翻訳は遺伝子に含まれる指示情報を細胞が読み出し発現させるための手段である。 1つの遺伝子から複数のRNA複製が作られ、各RNA分子は直接タンパク質合成を指示するので、 細胞は必要に応じて多くのタンパク質を合成することができる。 各遺伝子はどれも転写し翻訳することができるが、遺伝子によって発現量が異なる。 その多くは転写RNA生産量の制御によって行われている。

6.1.1. DNA配列の一部がRNAに転写される(Portions of DNA sequence are transcribed into RNA)

6.1.2. 転写ではDNA鎖の一方と相補的なRNAが作られる(Transcription produces RNA complementary to one strand of DNA)

6.1.3. 細胞は何種類かのRNAを作る(Cells produce several types of RNA)

6.1.4. DNAに収められた遺伝情報はRNAポリメラーゼに開始点と終了点を伝える(Signals encoded in DNA tell RNA polymerase where to start and stop)

6.1.5. 転写開始点と終了点は他とは異なる核酸配列を持つ(Transcription start and stop signals are heterogeneous in nucleotide sequence)

6.1.6. 真核生物では転写開始にさまざまなタンパク質が必要(Transcription initiation in eucaryotes requires many proteins)

6.1.7. RNAポリメラーゼIIは汎用転写因子を必要とする(RNA polymerase II requires general transcription factors)

6.1.8. ポリメラーゼIIは活性化因子、仲介因子、クロマチン調整タンパク質も必要とする(Polymerase II also requires activator, mediator, and chromatin-modifying proteins)

6.1.9. 転写伸長によってDNA中に超らせんによる張力ができる(transcription elongation produces superhelical tension in DNA)

6.1.10. 真核生物の転写伸長はRNA加工と会わせておこる(Transcription elongation is eucaryotes is tightly coupled to RNA processing)

6.1.11. RNAキャッピングは真核生物の伝令RNA前駆体に対する最初の調整(RNA capping is the first modification of eucaryotic pre-mRNA)

6.1.12. RNAスプライシングによって新しく転写された伝令RNA前駆体からイントロン配列が除去される(RNA splicing removes intron sequences from newly transcribed pre-mRNA)

6.1.13. スプライシングが起こった場所に核酸配列は伝えられる(Nucleotide sequences signal where splicing occurs)

6.1.14. RNAスプライシングはスプライソソームによって行われる(RNA splicing is performed by the spliceosome)

6.1.15. スプライソソームはATPの加水分解を使ってRNA-RNA再配置複合体を作る(The spliceosome uses ATP hydrolysis to produce a complex series of RNA-RNA rearrengement)

6.1.16. 伝令RNA前駆体中の順番はどのようにして正しい場所からスプライシングを行うのかを説明するのに役立つ(Ordering influences in the pre-mRNA help to explain how the proper splice sites are chosen)

6.1.17. 動植物では2組目の短鎖RNPがイントロン配列の小片を切り出す(A second set of snRNP splice a small fraction of intron sequences in animals and plants)

6.1.18. RNAスプライシングは著しい柔軟性がある(RNA splicing shows remarkable plasticity)

6.1.19. スプライソソームに触媒されたRNAスプライシングは恐らく自己スプライシング機構から進化した(Spliceosome-catalyzed RNA splicing probably evolved from self-splicing mechanisms)

6.1.20. RNA加工酵素は真核生物伝令RNAの3'末端を作る(RNA-processing enzymes generate the 3'-end of eucaryotic mRNAs)

6.1.21. できあがった真核生物の伝令RNAは選ばれて核から放出される(Mature eucaryotic mRNAs are selectively exported from the nuclleus)

6.1.22. 多くの非コードRNAも核で合成され加工される(Many noncoding RNAs are also synthesized and processed in the nucleus)

6.1.23. 核小体はリボソーム生産工場(The nucleolus is a ribosome-producing factory)

6.1.24. 核には様々な核内構造がある(The nucleus contains a variety of subnuclear structures)

6.2. RNAからタンパク質へ(From RNA to protein)

6.3. RNAの世界と生命の起源(The RNA world and the origins of life)

7. 遺伝子発現の制御(Control of gene expression)

7.1. 遺伝子制御の概要(An overview of gene control)

7.2. 遺伝子制御タンパク質のDNA結合モチーフ(DNA-binding motif in gene regulatory proteins)

7.3. 遺伝的切り替えの機構(How genetic swithces work)

7.4. 細胞分化を生み出す分子的遺伝機構(The molecular genetic mechanisms that create specialized cell types)

7.4.1. 細菌ではDNA再配置が相の多様性を生み出している(DNA rearrengements mediate phase variation in bacteria)

7.4.2. 出芽酵母では一連の遺伝子制御タンパク質が細胞型を決定している(A set of gene regulatory proteins determines cell type in a budding yeast)

7.4.x. ゲノムインプリンティングがDNAのメチル化には必要(Genomic imprinting requires DNA methylation)

7.5. 転写後制御(Posttranscriptional controls)

7.5.x RNA干渉は細胞が遺伝子発現を抑制するのに使う(RNA interference is used by cells to silence gene expression)

真核生物細胞はRNA分解の特別な型を外来RNA分子を破壊する防衛機構に用いる。 このような外来RNA分子は特に細胞内で2本鎖型をしていることによって識別される。 RNA干渉(RNA interference、RNAi)と呼ばれるこの機構は、広範囲の生物で見られ、それには単細胞の菌類、植物、虫、ねずみ、そして多分ヒトにも存在する。 このことは進化的に古くからある防衛機構であることを示唆していると考えられる。 植物の場合、RNA干渉は細胞をRNAウイルスから守る。 他の生物では、RNA中間体を経て複製される転位因子の増殖を防御していると考えられている(図5-76)。 多くの転位因子と植物ウイルスは2本鎖RNAを作る(少なくとも生活環のどこか一部では)。 RNA干渉は、このように外来RNA分子のチェックを行うだけではなく、個々の細胞遺伝子の発現抑制を行う強力な実験技術としても用いられている(図8-65)。

遊離状態の2本鎖RNAがあると、RNAヌクレアーゼ(分解酵素)とRNAヘリカーゼ(2本鎖をほどく酵素)を含む蛋白質複合体を呼び寄せることによってRNA干渉を開始する。 この蛋白質複合体は2本鎖RNAを小さな断片(およそ23塩基対)に切断する。 この断片は酵素が結合したままの部分に当たる。 そして、酵素に結合したRNA断片は酵素複合体に指示する。 指示内容は、相補的配列を持つRNA分子であり、酵素はその相補的配列を同じように分解する。 この他の分子は1本鎖でも2本鎖でも構わない(相補鎖と同じ長さなら)。 こうして2本鎖RNA分子は細胞内にある特定のmRNAを不活性化するのに用いられる(図7-107)。

図7-107:RNA干渉の機構
図の左は外来2本鎖RNA分子の運命を示している。 外来2本鎖RNAは、大きな蛋白質複合体の中にあるRNaseに認識され、約23塩基対の短い断片へと分解される。 この断片はRNA依存性RNAポリメラーゼによって時々増幅される。 この場合、効率的に子孫細胞へと受け継がれる。 もし外来RNAが細胞遺伝子と似たヌクレオチド配列を持っていたら(図右)、遺伝子から転写されたmRNAはここに示した過程によって分解される。 こうして細胞遺伝子の発現は、遺伝子ヌクレオチド配列に一致する2本鎖RNA分子を細胞内に導入することで抑制できる。 RNA干渉にはATP加水分解とRNAヘリカーゼも必要であり、恐らくそれは追加のRNA分子と塩基対を形成するための1本鎖RNA分子を作るためである。

新たなRNAを切断する度に、酵素複合体は短いRNA分子を再生成する。そのため元の2本鎖RNA分子は触媒的に働いて多くの相補的RNAを分解することができる。 さらに、低分子2本鎖RNA切断産物自身は、追加の細胞酵素によって複製され、それによってRNA干渉活性は増幅される(図7-107)。 この増幅は一旦始まったRNA干渉をより確かなものとし、これは最初の2本鎖RNAが分解され尽くすか、薄め切られるかするまで続く。 例えば、娘細胞が親細胞によって誘発されたRNA干渉を行い続けられるようにする。 さらにRNA干渉活性はRNA断片を細胞から細胞へと転移させることで広めることができる。 これは植物で特に重要である(細胞間はしっかりした接続チャンネルでつながっている、19章参照)、なぜなら数個の細胞がRNAウイルスに感染しただけで植物全体がウイルス耐性を得られるからである。

7.6. ゲノム発展の機構(How genomes evolve)


10. 膜の構造(MembraneStructure)

10.1. 脂質二重層(The Lipid Bilayer)

10.1.1. 膜脂質は両親煤性で、多くは自発的に2層を形成する(Membrane Lipids are Amphipathic Molecules, Most of which Spontaneously Form Bilayers)

10.1.2. 脂質二重層は二次元の流動体である(The Lipid Bilayer is a Two-dimensional Fluid)

10.1.3. 脂質二重層の流動性はその構成に依存する(The Fluidity of Lipid Bilayer Depends on Its Composition)

10.1.4. 細胞膜はスフィンゴ脂質、コレステロール、膜タンパク質が豊富な脂質ラフトを含む(The plasma membrane contains lipid rafts that are enriched in sphingolipids, cholesterol, and some membrane proteins)

細胞膜の脂質分子の多くは脂質単層に混ざっている。 隣接する脂肪酸との間に働くファンデアワールス力は、 この種の分子をまとめるほどの選択力はない。 しかしスフィンゴ脂質のような脂質分子(長い飽和した炭化水素鎖を持つ傾向にある)に対しては、 一時的に小さなマイクロドメインの中に隣接分子を引きつけるのに十分な力を持つ。 そのようなマイクロドメインは「脂質ラフト」と呼ばれ、 スフィンゴ脂質が凝集する流体脂質二重層において一時的な層分離であると考えられる。

動物細胞の細胞膜はそのような脂質ラフト(直径70nm以内)が多く含まれる。 それにはスフィンゴ脂質とコレステロールが豊富に含まれる。 ここでは脂質の炭化水素鎖は脂肪酸より長くまっすぐであるため、 他の部分より脂質二重層は厚くなる。 この状態はある種の膜タンパク質にとっては都合がよく、脂質ラフトに集まる傾向にある。 このように脂質ラフトは膜タンパク質が機能するのを助けていると考えられる。 小胞輸送のために濃縮を行ったり、共同して細胞外の信号を脂肪内に伝えたり。

10.1.5. 脂質二重層の非対称性は機能的に重要である(The asymmetry of the lipid bilayer is functionally important)

10.1.6. 糖脂質は全ての細胞膜表面に見られる(Glycolipids are found on the surface of all plasma membranes)

膜において最も非対称性の高い脂質分子は、糖脂質と呼ばれる糖を含んだ脂質分子である。 この面白い分子は脂質二重層の非細胞質側の単層にのみ見られるもので、脂質ラフトに多い部分であると考えられている。

糖脂質はおそらく全ての動物細胞の細胞膜に存在し、 外側単層の脂質分子の約5%を占める。 糖脂質は細胞内の膜にも見られる。 最も複雑なものは、ガングリオシドで、少糖に1つ以上のシアル酸が結合したものである。 シアル酸は負に帯電しており、ガングリオシドも全体としては負に帯電したものとなる。 40種以上のガングリオシドが特定されている。 神経細胞の細胞膜で最も豊富に見られ、脂質全体の5〜10%を占める。 他の型の細胞ではこれよりも量が少ない。

10.2. 膜タンパク質(Membrane Proteins)

13. 細胞内小胞輸送(Intercellular Vesicular Traffic)

13.1. 膜輸送の分子機構と区画多様性の維持(The molecular mechanisms of membrane transport and the maintenance of compartmental diversity)

13.1.1. 様々な型の被覆小胞(There are various types of coated vesicles)

13.1.2. クラスリン被覆の集合による小胞形成(The assembly of a clathrin coat vesicle formation)

アダプチン(adaptin)

13.1.3. 被覆小胞の切り離しと被覆除去は制御された過程である(Both the pinching-off and uncoating of coated vesicles are regulated processes)

ダイナミン(dynamin)

hsp70 オーキシリン(auxillin)

13.1.4. 全ての輸送小胞が球形という訳ではない(Not all transport vesicles are spherical)

13.1.5. 単量体GTPアーゼが被覆凝集を制御している(Monomeric GTPases control coat assembly)

13.1.6. SNARE蛋白質とGTPアーゼの対象が膜輸送を誘導する(SNARE protein and targeting GTPases guide membrane transport)

膜輸送を正しく進めるために、融合する対象となる膜を正確に特定する必要がある。 膜機構には様々なものがあるため、正確な1個を見つけるまでに多くの対象膜の候補に行き当たりそうである。 膜の特定は、全ての輸送小胞が起源と容器の種類によって特定される表面マーカーを提示していることにより保証される。 対象膜は適切なマーカーを認識する相補的受容体を提示している。 この重要な認識段階は主に2つの蛋白質〜SNAREおよびRabと呼ばれる対象GTPアーゼ〜によって制御されている。 SNARE蛋白質は、特異性の提供と、対象膜への小胞融合の触媒との両方において中心的な役割を果たしているようである。 Rabは他の蛋白質と協同して、初期の結合と小胞の対象膜へのつなぎ止めを制御する働きをしているようである。

動物細胞には少なくとも20種類のSNAREがある。 それぞれ特定の、分泌や取り込みといった生合成に関わる膜に囲まれた小器官に関わっている。 この膜貫通蛋白質は相補的な組として存在する。 一方はv-SNAREと呼ばれる小胞膜SNARE、もう一方はt-SNAREと呼ばれる対象膜SNAREである(図13-11、13-12)。 どちらもらせん状ドメインを持っているという特徴がある。 v-SNAREがt-SNAREと相互作用すると、一方のらせん状ドメインがもう一方のらせん状ドメインを取り囲み、安定なトランスSNARE複合体を作る。 これが2つの膜を一緒に固定する。 トランスSNARE複合体がどのようにして膜融合に貢献しているかについては後述する。 SNAREの特異性が小胞の結合と融合の特異性を決定している。 こうしてSNAREは区画を特定し、小胞輸送中に物質の正しい輸送を統括する。

図13-11:小胞輸送を誘導するSNAREの役割の仮説。 相補的な、小胞SNARE(v-SNARE)と対象膜SNARE(t-SNARE)との組が、輸送小胞の結合と融合の選択性に貢献する。 v-SNAREは、提供膜から輸送小胞が出芽する間、被覆蛋白質の中に収められ、相補的な対象膜のt-SNAREと結合している。 融合した後も2つのSNAREは強固な複合体を保つ。 複合体はt-SNAREが新たな小胞に受容されるか、またはv-SNAREが次の輸送小胞に加わるために提供膜から再利用される前に解離する必要がある。 ここに示したように、容器分子ごとに違うv-SNAREが収められて(ここに示していない他の蛋白質と協同で)供給元小器官から離れる。 この図の場合、2組の入れ物が異なるt-SNAREのところに、つまり異なる対象膜のところに運ばれる。

図13-12:組になったSNAREの構造。 神経末端の細胞膜にあるシナプス小胞の結合に関係するSNAREは3つの蛋白質で構成されている。 v-SNAREのシナプトブレビン(synaptobrevin)と、t-SNAREのシンタキシン(syntaxin)はいずれも膜貫通蛋白質で、複合体のαらせんを1つずつ提供する。 t-SNAREのSnap25は付属的な膜蛋白質で、2つのαらせんを4らせんの束にするのに貢献する。 トランスSNARE複合体は常に4つの強固で相互にねじれ合ったαらせんでできれいて、そのうち3つはt-SNAREから、あと1つはv-SNAREに由来する。
t-SNAREは複数の鎖で構成されている。 1つは膜貫通蛋白質でらせん1本に貢献する。 あと1、2本追加の短い鎖があり、膜貫通であることも膜貫通でないこともある。 こちらは残り2つのらせんを束ねて4らせんの束にし、トランスSNARE複合体を維持するのに貢献する。 これらの蛋白質に寄与された4つのらせんが絡み合った安定な複合体の結晶構造をここでは蛋白質全体の模型にした。αらせんは単純化するために棒で示している。 図はR.B.Suttonらの論文(Nature 395:347-353,1998)の図5を単純化したものである。

SNAREは神経細胞で特徴的に見られる。 そこでは神経末端の細胞膜におけるシナプス小胞の結合と融合を仲介している(図13-12)。 神経末端にあるSNARE複合体は、強力な神経毒の対象となる。 このような神経毒は、破傷風(強縮)やボツリヌス中毒を引き起こす細菌によって分泌される。 これらの毒は、特定の神経に入る蛋白質分解酵素に対して非常に特異的で、神経末端においてSNARE蛋白質を切断する。 これによってシナプス輸送が阻害され、えてして致命的になる。

13.1.7. SNAREが再び機能する前にSNARE相互作用はひきはがす必要がある(Interacting SNAREs need to be pried apart before they can function again)

細胞内にあるほとんどのSNAREは既に何度も膜を対象としていて、1個か2個の相手と一緒に安定な複合体を形成して膜に存在することがある(図13-11)。 SNAREが新たな輸送につく前に、この複合体は解体される必要がある。 NSFと呼ばれる重要な蛋白質が膜と細胞質との間を巡回し、分解過程を触媒する。 これはATPアーゼで、細胞質シャペロン蛋白質の少数派群と構造的に似ている。 細胞質シャペロンはATP加水分解のエネルギーを使って変性した蛋白質を可溶化し、折りたたみ直すのを助ける。 似たことが、NSFでも行われており、 こちらではATPをSNARE蛋白質のらせんドメイン間の二重らせん相互作用をほどくのに使う。 この際SNAREと結合するのにいくつかの中継蛋白質を使う。

SNARE複合体の解体が必要なことは、なぜ膜が細胞内で無差別に融合してしまわないのかを説明する助けになるかもしれない。 もし対象膜のt-SNAREが常に活性状態に有れば、適合するv-SNAREを持つ膜は出会ってしまうと常に融合することになる。 NSFが仲介する再活性化がSNAREには必要なことが、膜融合の場所と時を制御できるようにしているのである。 更に、対象膜中のt-SNAREはSNAREが機能する前に、阻害蛋白質を放す必要があることが多い。 この解離段階は対象GTPアーゼによって制御されている。それについて次に述べる。

13.2. 小胞体からゴルジ体への輸送(Transport from the ER through the Golgi apparatus)

13.3. ゴルジ体ネットワークからリソソームへの輸送(Transport from the trans Golgi network to lysosomes)

13.4. 細胞膜から細胞内への輸送:エンドサイトーシス(Transport into the cell from the plasma membrane: Endocytosis)

13.5. ゴルジ体ネットワークから細胞外への輸送:エキソサイトーシス(Transport from the trans Golgi network to the cell exterior: Exocytosis)

14. エネルギー変換:ミトコンドリアと葉緑体(Energy conversion: mitochondria and chloroplasts)

14.1. ミトコンドリア(The mitochondrion)

14.2. 電子伝達系と蛋白質ポンプ(Electron-transport chains and their protein pumps)

14.3. 葉緑体と光合成(Chloroplast and photosynthesis)

14.3.1. 葉緑体は細胞小器官の中の色素体ファミリーの1つである(The chloroplast is one of the plastid family of organelles)

14.3.2. 葉緑体はミトコンドリアと似ているが追加の区画を持っている(Chloroplast resemble mitochondria but have an extra compartment)

14.3.3. 葉緑体は日光からエネルギー受け取りそれを炭素固定に使う(Chloroplast capture energy from sunlight and use it to fix carbon)

14.3.4. 炭素固定はリブロース2リン酸カルボキシル基転移酵素(ルビスコ)によって触媒される(Carbon fixation is catalyzed by ribulose bisphosphate carboxylase)

14.3.5. 1分子の二酸化炭素を固定するのに3分子のATPと2分子のNADPHが消費される(Three molecules of ATP and two molecules of NADPH are consumed for each CO2 molecule that is fixed)

14.3.6. 低二酸化炭素濃度での成長を促進するために炭素固定の区画を分けている植物がある(Carbon fixation in some plants is compartmentalized to facilitate growth at low CO2 concentrations)

14.3.7. 光合成はクロロフィル分子の光化学に依存している(Photosynthesis depends on the photochemistry of chlorophyll molecules)

14.3.8. 光化学系は反応中心にアンテナ複合体が加わってできている(A photosysytem consists of a reaction center plus an antenna complex)

14.3.9. 反応中心では、クロロフィルによって捕らえられた光エネルギーが弱い電子供与体から強い電子供与体を作り出す(In a reaction center, light energy captured by chlorophyll creates a strong electron donor from a weak one)

14.3.10. 非循環的光リン酸化によってNADPHとATPの両方が作られる(Noncyclic photophosphorylation produces both NADPH and ATP)

植物やシアノバクテリアの光合成ではATPとNADPHの両方が2段階の過程によって直接生産される。 この過程は「非循環的光リン酸化」と呼ばれる。 なぜなら2つの光反応系(光反応系Iと光反応系II)は電子にエネルギーを与えるのに使われ、電子は水からNADPHへとはるばる輸送されるから。 高エネルギー電子は組になった光反応系を通ってNADPHを作り出す、そのエネルギーの一部はATPの合成のために取り出される。

2つの光反応系のうち最初に来る方〜最初なのに光反応系IIと呼ばれが、これは歴史的経緯による〜が水から電子を取り出す能力のある唯一の存在である。 2分子の酸素がまだよく分かっていない水分割酵素のマンガン原子クラスターに結合する。 この酵素は1度に1個ずつ水分子から電子を除去することができる。 反応中心のクロロフィル分子の中に、埋める必要がある電子が欠乏した孔(正孔)が光によって作られる。 2分子の水分子から4個の電子が除去されるとすぐに酸素ガスが放出される(この反応には4個の光子が必要である)。 従って光化学系IIは、2H20 + 4光子 → 4H+ + 4e- + 02 の反応を触媒することになる。 酸素を使って水を作り出すミトコンドリアの電子伝達系で述べたように、酸化された水分子が危険で高い反応性を持つ酸素ラジカルとして放出されることがないよう機構は保証している。 基本的に地球大気中の酸素は全てこのようにして作られている。

光化学系IIの反応中心の中核は細菌のものと似ている。 同様に強力な電子供与体を作り出す。 それは膜の脂質二重層中に溶解した状態で存在する還元型キノン分子という形で作られる。 キノンはは持っている電子をシトクロムb6複合体と呼ばれる水素イオンポンプに渡す。 このシトクロムb6複合体は、ミトコンドリアの呼吸系に存在するシトクロムb-c1複合体と似ている。 シトクロムb6複合体は水素イオンをチラコイド空間からチラコイド膜を越えて内側へ汲み入れる (またはシアノバクテリアの細胞膜を越えて細胞質へと汲み出す)。 その結果生じる電気化学的勾配がATPの合成を推進する。それはATP合成酵素によって行われる(図14-46)。

図14-46:チラコイド膜における光合成中の電子の流れ。 移動性電子の運搬はプラストキノン(ミトコンドリアのユビキノンと似ている)、プラストシアニン(小さな銅含有蛋白質)、フェレドキシン(鉄硫黄中心を持つ小さな蛋白質)によって行われる。 シトクロムb6-f複合体は、ミトコンドリアのb-c1複合体や細菌のb-c複合体と似ている(図14-71参照)。 これら3つの複合体はいずれも電子をキノンから受け取り、膜を越えて水素イオンを移動させる。 水の酸化によって解放された水素イオンはチラコイド空間に放出され、ストロマでNADPH形成によって消費される。また電気化学的水素イオン濃度勾配の生成にも貢献する。 この濃度勾配が、同じ膜内にあるATP合成酵素(図示していない)によるATP合成を推進する。

14.3.11. 葉緑体は循環的光リン酸化によってNADPHなしでATPを作ることができる(Chloroplasts can make ATP by cyclic photophosphorylation without making NADPH)

14.3.12. 光化学系IとIIは関連した構造を持っており、細菌の光化学系とも似ている(Photosystems I and II have related structures, and also resemble bacterial photosystems)

14.3.13. 光による動力はミトコンドリアと葉緑体で同じである(The photon-motive force is the same in mitochondria and chloroplasts)

14.3.14. 葉緑体内膜の輸送蛋白質は細胞質との代謝産物の交換を制御している(Carrier proteins in the chloroplast inner membrane control metabolite exchange with the cytosol)

14.3.15. 葉緑体は他にも重要な生合成を行っている(Chloroplasts also perform other crucial biosyntheses)

14.3.16. まとめ

葉緑体と光合成細菌は、クロロフィル分子が日光を捕らえられた時に励起された電子を捕らえる光化学系を使って高エネルギー電子を得ている。 光化学系はエネルギーを光化学反応中心へ集めるアンテナ複合体でできている。 これは蛋白質と色素が正確に並んだ複合体で、クロロフィルの励起電子のエネルギーを電子輸送体が捕らえられるようにしている。 よく分かっている光化学系反応中心は紅色光合成細菌のもので、これには1つの光化学系しかない。 一方シアノバクテリアの光化学系は2つある。 2つの光化学系は通常つながっていて、水からの電子をNADP+に渡してNADPHを作り、同時に膜内外で電気化学的プロトン濃度勾配を作り出す。 これらのつながった光化学系の中で分子状酸素ができる、2つの特別な場所に置かれた水分子から取り除かれた4つの低エネルギー電子の副産物として。

14.4. ミトコンドリアと色素体の遺伝的機構(The genetic systems of mitochondria and plastids)

14.5. 電子伝達系の進化(The evolution of electron transport chains)

15. 細胞間のコミュニケーション(Cell communication)

15.1. 細胞間コミュニケーションの一般的原則(General principles of cell communication)

15.2. G蛋白質に結合した細胞表面受容体を通じた信号伝達(Signaling through G-protein-linked cell-surface receptors)

15.2.1. 3量体G蛋白質は信号中継のためG蛋白質結合受容体から解離する(Trimeric G protein disassemble to relay signals from G-protein-linked receptors)

15.2.2. 環状AMPの生産調整によって信号伝達を行うG蛋白質もある(Some G proteins signal by regulating the production of cyclic AMP)

15.2.3. 環状AMP依存性蛋白質リン酸化酵素(PKA)は環状AMPの効果のほとんどを仲介している(Cyclic-AMP-dependent protein kinase (PKA) mediates most of the effects of cyclic AMP)

15.2.4. 蛋白質リン酸化酵素はPKAとその他の蛋白質リン酸化酵素の変動に影響する(Protein phosphatases make the effect of PKA and other protein kinase transitory)

15.2.5. フォスフォリパーゼC-βを活性化することによってイノシトールリン脂質信号伝達経路を活性化するG蛋白質がある(G proteins activate the inositol phpspholipid signaling pathway by activating phospholipase C-β)

多くのG蛋白質に結合した受容体は、主に細胞膜に結合した酵素フォスフォリパーゼC-β(phospholipase C-β)によって活性化されるG蛋白質を通して効果を発揮する。 そのような方法で活性化されるいくつかの例を表15-2に示した。 リン脂質はフォスファチジルイノシトール 4,5 2リン酸(phosphatidylinositol 4,5-bisphosphate, PI(4,5)P2と呼ばれるイノシトールリン脂質(inositol phospholipid, phosphoinositide)に作用する。 このPIP2は細胞膜脂質二重層の内側半分の中に少量含まれる(図15-34)。 このイノシトールリン脂質信号伝達経路(inositol phospholipid signaling pathway)を通して操作する受容体は主にGqと呼ばれるG蛋白質によって活性化される。 GqがフォスフォリパーゼC-βを活性化する方法は、Gsがアデニルシクラーゼ(adenyl cyclase)を活性化するのと多くの部分が同じである。 活性化されたフォスフォリパーゼはPI(4,5)P2を切断し、2つの生成物〜イノシトール1,4,5-3リン酸とジアシルグリセロール〜を作り出す(図15-35)。 この最初の段階で、信号伝達経路は2つに分かれる。

イノシトール 1,4,5-3リン酸(inositol 1,4,5-triphosphate、IP3)は小さな水溶性の分子で、細胞膜を離れて急速に細胞質へと拡散する。 小胞体(endplasmic reticulum, ER)に到達すると、それに結合して小胞体膜にあるIP3によって開閉するCa2+放出チャネルを開く。 小胞体に蓄えられたカルシウムイオンはチャネルの開放によって放出され、細胞質のカルシウムイオン濃度は急速に上昇する(図15-36)。 カルシウムイオンがどのようにして信号の増幅に作用するのかについては後に議論する。 いくつかの機構が最初のカルシウムイオン反応の終了を操作する。 (1)IP3が特異的リン酸化酵素によって急速に脱リン酸化されてIP2を形成する。 (2)IP3がリン酸化されてIP4になる(これは細胞内仲介物質として他の機能を持っている)。 (3)細胞質に入ったカルシウムイオンは、主に細胞外へと急速に排出される。

細胞質カルシウムイオン濃度上昇によってPI(4,5)P2が加水分解されてIP3ができると同時に、もう1つの切断生成物であるジアシルグリセロールが別の効果を発揮する。 ジアシルグリセロールは細胞質に埋まったまま残り、2つの潜在的な信号伝達の役割を果たす。

1つはこれが更に分解されてアラキドン酸(arachidonic acid)を放出する。 これは自己の信号伝達物質として作用したり、エイコサノイド(eicosanoid)と呼ばれる小さな脂質信号伝達物質の合成に用いられたりする。 プロスタグランジン(prostaglandin)などのエイコサノイドはほとんどの脊椎動物の細胞型で見られ、広範な生物的作用を持っている。 痛みや炎症反応などに関わっている。ほとんどの抗炎症薬(アスピリン aspirin、イブプロフェン ibuprofen、コルチゾン cortisoneなど)はエイコサノイドの合成を阻害することによって作用する。

2つ目はもっと重要で、ジアシルグリセロールは、蛋白質リン酸化酵素C(protein kinase C、PKC)と呼ばれる重要なセリン/スレオニン蛋白質リン酸化酵素を活性化する機能を持つ。 蛋白質リン酸化酵素Cという名前は、それがカルシウムイオンに依存することに由来する。 IP3によって誘発された、最初の細胞質におけるカルシウムイオン濃度上昇は、PKCが細胞質から細胞膜の細胞質側表面へと移動するよう変化させる。 そこで、カルシウムイオン、ジアシルグリセロール、そして負に帯電した膜リン脂質フォスファチジルセリンの組み合わせによって活性化される(図15-36)。 一旦活性化されると、PKCは対象蛋白質をリン酸化する。対象は細胞型によって変化する。 原則は既に議論したPKAと同じだが、対象蛋白質が異なる。

2つに分かれたイノシトールリン脂質信号伝達経路はそれぞれ特定の薬理学的な薬剤を無処理の細胞に追加することによって模倣することができる。 IP3の効果はカルシウムイオンイオノフォア(A23187やイオノマイシン ionomycinなど)を使って模倣できる。これは細胞外液から細胞質へとカルシウムイオンを移動させる働きを持つ(11章で議論した)。 ジアシルグリセロールの効果はホルボールエステル(phorbol ester)で模倣できる。 これは植物の生成物で、PKCに結合してこれを直接活性化する。 これらの試薬を使って、細胞反応全体を生み出すのに両過程が協同していることが示されてきた。 リンパ球などの細胞ではカルシウムイオンイオノフォアとPKC活性化因子の両方で処理した時に増殖が促進される。どちらか一方では促進されない。

15.3. 酵素に結合した細胞表面受容体を通じた信号伝達(Signaling through enzyme-linked cell-surface receptors)

15.4. 制御された蛋白質分解に依存する信号伝達経路(Signaling pathway that depend on regulated proteolysis)

15.5. 植物における信号伝達(Signaling in plants)


20. 生殖細胞と受精(Germ Cells and Fertilization)

無性生殖は、親と子孫が同じ遺伝子型を持つ。 一方、有性生殖では2つの個体の遺伝子が混合されて親とは異なる組み合わせの遺伝子型を持つ子孫ができる。

20.1. 性の利点(Benefits of Sex)

有性生殖の過程では、1倍体(半数体)細胞が形成される。 2倍体細胞が2組の染色体を持つのに対し、 1倍体細胞は、1組の染色体しか持たない。 2つの1倍体細胞が融合して2倍体細胞になる。 そして、減数分裂によって再び1倍体細胞が作られる。 減数分裂の際、遺伝的組み替えによって2つの染色体の間でDNAの交換が行われる。 それぞれの親細胞に由来する遺伝子を持った1組ずつの染色体が合わさって、 親とは異なる組み合わせの子ができる。 半数体形成、細胞融合、2倍体形成、減数分裂といった過程を経て、 古い組み合わせの遺伝子は壊されて、新しい組み合わせが形成される。

20.1.1. 多細胞の動植物では2倍体期は複雑で長く、1倍体期は単純ではかない(In Multicellular Animals and Most Plants, the Diploid Phase is Complex and Long, the Haploid Simple and Fleeting)

20.1.2. 有性繁殖は予期せぬ環境の変化で生き抜くのに有利(Sexual Reproduction Gives a Competitive Advantage to Organisims in an Unpredictable Variable Environment)

20.2. 減数分裂(Meiosis)

20.2.1. 相同染色体が減数分裂で複製される(Duplicated Homologous Chromosomes Pair During Meiosis)

20.2.2. 配偶子は2回の減数分裂的分裂を経て作られる(Gametes are Produced by Two Meiotic Cell Divisions)

20.2.3. 遺伝的再分類は相同な非姉妹染色分体間の乗り換えによって促進される(Genetic Reassortment is Enhanced by Crossing-over Between Homologous Nonsister Chromatids)

20.2.4. キアズマは減数分裂において染色体分離に重要な役割を果たす(Chiasmata Have an Important Role in Chromosome Segregation in Meiosis)

20.2.5. 性染色体の組み合わせは性染色体自身も分離することを示す(Pairing of the Sex Chromosomes Ensures That They Also Segregate)

20.2.6. 減数分裂の染色体対合によってシナプトネマ構造が形成される(Meiotic Chromosome Pairing Culminates in the Formation of the Synaptonemal Complex)

20.2.7. 組み換え結節は遺伝的組み換えの場所に印をつける(Recombination Nodules Mark the Sites of Genetic Recombination)

20.2.8. 遺伝的地図によって乗り換えに適した場所が分かった(Genetic Maps Reveal Favored Sites for Crossovers)

20.2.9. 減数分裂はDNA複製を行わずに2回続けて細胞分裂が行われる(Meiosis Ends with Two Successive Cell Divisions Without DNA Replication)

20.3. 哺乳類における始原生殖細胞と性決定(Primordial Germ Cells and Sex Determination in Mammals)

20.4. 卵(Eggs)

20.5. 精子(Sperm)

20.6. 受精(Fertilization)

22. 組織学:組織内細胞の生と死(Histology: The lives and death of cells in tissues)

22.1. 表皮と幹細胞による表皮の再生(Epdermis and its renewal by stem cells)

22.2. 感覚性上皮(Sensory epithelia)

22.3. 気道と腸管(The airway and the gut)

22.4. 血管と内皮細胞(Blood vessels and endothelial cells)

胚の外胚葉(ectoderm)と内胚葉(endoderm)に由来する組織を、中胚葉(mesoderm)と呼ぶ。 この中間層の細胞は、内胚葉と外胚葉に挟まれ、増殖し分散して、広範囲で支持性の機能を果たす。 身体の結合組織、血液細胞、血管、筋肉、腎臓の他さまざまな構造と細胞型がある。 まず血管から。

22.4.1. 内皮細胞は全ての血管を裏打ちする(Endothelial cells line all blood vessels)

22.4.2. 新しい内皮細胞は既存の内皮細胞の単なる複製で作られる(New endothelial cells are generated by simple duplication of existing endothelial cells)

22.4.3. 新しい毛細血管は芽が出て形成される(New capillaries form by sprouting)

22.4.4. 血管形成は周辺組織から放出される因子によって制御される(Angiogenesis is controlled by factors released by the surrounding tissues)

22.5. 多能性幹細胞による再生:血液細胞の形成(Renewal by multipotent stem cells:blood cell formation)

血液には様々な機能を持つ多様な型の細胞がある。 酸素を運ぶものから抗体を作るものまで。 血管機構の中だけで機能する細胞もあれば、血管は輸送手段として使うだけで機能は他の場所で果たしている細胞もある。 しかし全ての血液細胞はその生活史には共通点がある。 それは寿命が限られていて、動物の生涯を通して作り続けられるということである。 そして最も驚くべきことは、血液細胞は全て元をたどれば骨髄中にある共通の幹細胞から作られている。 この造血幹細胞(hemopoietic stem cell, blood-forming stem cell)は多能性で、全ての型の最終的に分化した細胞になれるだけでなく、いくつかの血液細胞以外の細胞にも分化できる。骨にある破骨細胞など(後に議論)。

血液細胞は赤と白に分類できる。 赤血球(red blood cell, erythrocyte)は血管内に留まり酸素と二酸化炭素をヘモグロビンに結合させて運ぶ。 白血球(white blood cell, leucocyte)は感染症と闘い、場合によっては貧食したり、残骸を消化したりする。 白血球は赤血球とは異なり、小さな血管から壁を越えて出る通路と作り、組織に移動して仕事をしないといけない。 更に、血液中には数多くの血小板(platelet)がある。 これは完全な細胞ではなく、小さくちぎれた細胞の断片、あるいは巨核球(megakaryocyte)と呼ばれる大きな細胞の皮層細胞質に由来する「微小細胞」である。 血小板は損傷を受けた血管の内皮細胞系統特異的に癒着する。 それにより穴の修復を助け、血栓形成過程を支援している。

22.5.1. 白血球の主要な3つのグループ:顆粒球、単球、リンパ球(The three main categories of white blood cells: granulocytes, monocytes, and lymphocytes)

顆粒球(granulocyte)は多くのリソソーム(lysosome)と分泌小胞(secretory vesicle)または顆粒(granule)を持っていて、形状や細胞内小器官の染色に関する性質から更に3種に分類される。 好中球(neutrophil)は多核白血球(polymorphonuclear leucocyte)とも呼ばれる。 この名称は、複数分岐した核を持つことによる。 顆粒球の中では最も一般的で、食作用を行い細菌などの微生物を破壊する。 自然免疫における重要な役割を果たしている。 好塩基球(basophil)はヒスタミン(histamine)を分泌する。種によってはセロトニン(serotonin)を分泌する。 炎症反応の仲介を助けている。 肥満細胞(マスト細胞)の機能と非常に関係がある。 この細胞は結合組織にいるが、多能性幹細胞からも作られる。 好酸球(eosinophil)は寄生者の破壊を助け、アレルギー炎症反応を調整する。

22.5.2. 骨髄における各型の血液細胞の形成は個々に制御されている(The production of each type of blood cell in the bone marrow is individually controlled)

22.5.3. 骨髄には多能性幹細胞がある(Bone marrow contains hemopoietic stem cells)

22.5.9. 赤血球形成はエリスロポエチンホルモンに依存する(Erythropoiesis depends on the hormone erythropoietin)

22.6. 骨格筋の起源、調節、制御(Genesis, modulation, and regulation of skeletal muscle)

22.7. 繊維芽細胞とその変化:結合組織細胞の仲間(Fibroblasts and their transformations: the connective tissue cell family)

22.8. 幹細胞工学(Stem-cell engineering)

23. がん(Cancer)

24. 獲得免疫機構(The adaptive immune system)

私たちの「獲得免疫」は感染症による死によって保存された。 獲得免疫を欠いた乳児は、細菌、ウイルス、菌類、寄生虫などの病原体から宿主を隔離する特別な措置がない限り、すぐに死んでしまうだろう。 私たちに限らず全ての多細胞生物は病原体(pathogen)と呼ばれる侵入者に対して、対抗する必要がある。 無脊椎動物は比較的簡単な方法を取る。 主に、保護障壁、毒性分子、食作用性細胞に依存し、 侵入してきた微生物や寄生虫を消化して破壊する。 脊椎動物も同様の自然免疫応答(innate immune response)を最初の手段として使うが、 より洗練された獲得免疫応答(adaptive immune system)も利用する。 自然免疫が獲得免疫を呼び出し、共同して病原体を排除する。 獲得免疫は自然免疫とは異なり、特定の病原体に反応し、防御効果は長く続く。 例えば、はしか(麻疹 measles)に一度かかって治った人は、獲得免疫によって守られている。 この免疫は、おたふく風邪(流行性耳下腺炎)や水疱瘡などのよくある他のウイルスには対抗してくれない。 この章では、主に獲得免疫について着目する。断りなく「免疫」と言った場合は「獲得免疫」を指すものとする。 自然免疫については25章で議論する。

獲得免疫の機能は、外来の病原菌やそれらが産生した毒素を破壊することである。 この反応は破壊的なので、宿主にとって外来のものだけを対象とし、宿主自身のものは対象としないことが重要である。 自己と非自己を区別できることは、獲得免疫の基本的な特徴の1つである。 ところが、時にはその認識に失敗することがあり、宿主自身の分子に対して攻撃してしまう。 そのような自己免疫病は致命的となりうる。

もちろん、体内に侵入した多くの外来分子は有害だが、 それらに対して獲得免疫を発動するのは意味がなく、潜在的に危険でもある。 枯草熱(花粉症 hayfever)や喘息のようなアレルギー状態は、 外来分子に害がなく宿主自身に有害な獲得免疫の例である。 そのような不適切な反応は通常は避けられる。 なぜなら獲得免疫は自然免疫機構に呼び出されて初めて反応するものであり、 その呼び出しは自然免疫機構が侵入病原体に特有な「病原菌付随免疫刺激物質(pathogen-associated immunostimulants、25章で議論する)」を認識する必要があるからである。 さらに、自然免疫は病原体の種類を認識し、最も適切な型の獲得免疫を使って排除できる。

獲得免疫反応を引き出す物質は抗原(抗体産生物質)と呼ばれる。 私たちが知るそのような反応のほとんどは、 獲得免疫をだます動物実験(多くの場合マウスを使ったもの)による研究で得られたものである。 その実験とは、外来のタンパク質などに対するものであり、 「免疫賦活剤(adjuvant, アジュバント)」と呼ばれる無害な分子の注入を含む。 免疫賦活剤は多くの場合病原体から作られている。 そしてこの過程は免疫化(immunization)と呼ぶ。 この管理された方法で、ほとんどの外来高分子に対する獲得免疫を呼び出すことができる。 獲得免疫は、たった1残基のアミノ酸が違うだけでも、同じ分子の光学異性体であっても区別することができる。

獲得免疫反応はリンパ球と呼ばれる白血球の一種によって行われる。 免疫反応は大きく分けて2つある。 「抗体反応」と「細胞性免疫反応」の2つで、それぞれ異なる種類〜B細胞とT細胞〜によって行われる。 抗体反応ではB細胞が活性化され、抗体が産生される。 この抗体は免疫グロブリンと呼ばれるタンパク質である。 この抗体は体内を循環し、他の体液に浸透していく。 そして、特定の抗原に結合し、病原菌や、病原体の作った毒素(テタヌス(破傷風の毒素)やジフテリア毒素など)を不活性化する。 その不活性化は、宿主の受容体との結合を阻害することによる。 また抗体結合は、破壊すべき侵入病原体を印することにもなり、 食作用を持つ自然免疫機構の細胞が作用しやすくしている。

細胞性免疫反応は、もう1つの獲得免疫で、T細胞によって活性化され、 宿主細胞の表面に提示された抗原に直接反応する。 例えば、ウイルスに感染した細胞はウイルス抗原を細胞表面に提示し、T細胞によって殺されるようにする。 そうすることで、ウイルスが複製する機会を得る前に感染細胞ごと消し去ってしまうことができる。 また別の例として、T細胞が食作用で取り込んだ侵入病原体を破壊するための信号を放出し、マクロファージを活性化させる。

この章では、まずリンパ球の一般的な性質から議論する。 続いて抗体の機能と構造的な特徴に着目し、どのようにして外来病原菌やそれが出した毒素を無害化するのかを考える。 更に、B細胞がどのようにして限りなく多様な抗体を作ることができるのかについて議論し、 最後にT細胞の特徴と細胞性免疫反応との関わりについて考える。 T細胞は、細胞内にある病原体でも検出できる上、感染細胞を殺すことも、病原体を殺す他の細胞を助ける事もできるのである。

24.1. 白血球と獲得免疫の細胞的基礎(Lymphocytes and the cellular basis of adaptive immunity)

24.2. B細胞と抗体(B cells and antibodies)

24.3. 抗体多様性の世代(The generation of antibody diversity)

24.4. T細胞とMHCタンパク質(T cells and MHC proteins)

24.5. ヘルパーT細胞と白血球の活性化(Helper T cells and lymphocyte activation)